当院では15歳以下を対象に
食物経口負荷試験を実施しています
まずは予約の上受診いただくよう
お願いします
食物アレルギーとは
食物アレルギーとは、特定の食物を摂取することで免疫系が過剰に反応し、体に不利益な症状が起こる現象を指します。これは、身体が食物中の特定の成分(アレルゲン)を外敵と誤認し、免疫反応を示す結果生じます。
食物アレルギーの現状
食物アレルギーは乳児が最も多く、幼児から学童期にかけて減少します。
また、年齢により食物アレルギーを発症しやすい食材が異なります。乳児期は卵(卵白)、牛乳、小麦と有名な三食材ですが、1歳から6歳になると木の実が急増します。特にクルミやカシューナッツに注意が必要です。学童期から花粉-食物アレルギー症候群の果物アレルギー、成人になると、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの代表食材である小麦での発症が増加します。
最近、1歳未満のお子様で、卵黄を摂取し、2〜4時間くらい経過してから、繰り返し激しく嘔吐する食物蛋白誘発胃腸症が増えています。蕁麻疹を認めないことや摂取してから症状が出るまでの時間がやや長いことが食物アレルギーとの違いです。
食物アレルギーの症状
まず大事なのは、摂取して2時間以内に症状を認めることが多いということです。そして、起こった症状はその日のうちに大部分は改善しますので、何日も症状が続く時は食物アレルギーの可能性は低くなります。主な症状は次のようになっています。
それぞれの症状には起こりやすさがあり、以下のようになっています。
皮膚の症状、つまり蕁麻疹が出ることが多いです。蕁麻疹に加えて、咳や息苦しさ、意識がしっかりしていないなどの症状は重症のアナフィラキシーのサインです。
食物アレルギーの検査
食物アレルギーが疑われた場合、各種検査を実施することでアレルギーの原因を特定していきます。検査には血液検査、プリックテスト(皮膚テスト)、食物経口負荷試験といった検査があり、それぞれの検査には特徴があります。
血液検査
アレルギーの原因として疑われる食材に対する抗体を血液検査で測定します。検査結果がでるまでには約1週間かかります。注意したいのは、血液検査の結果とアレルギーの有無は必ずしも一致しません。血液検査が陽性でも、アレルギーではないこともあり、逆に血液検査が陰性でも、食べたらアレルギー症状が出る方もいらっしゃいます。
血液検査だけではアレルギーの診断にならないことをこの動画で説明しました!
プリックテスト
必要に応じて実施します。皮膚に食材のエキスを垂らして、細い針でほんの少しだけ皮膚に傷をつけます。15分後、そこに蕁麻疹ができていないかを判定します。
乳児は血液検査よりもプリックテストのほうが正しい結果が出やすいと言われています。また、口腔アレルギー症候群(口の中や喉が痒くなるアレルギー)の原因となる果物・野菜の特定もプリックテストが優れています。
食物経口負荷試験
食物アレルギーにおいて、もっとも信頼できる検査です。アレルギーが疑われる食材を一定の間隔で少しずつ摂取します。例えば、お子様の負荷試験は当院外来で、30分間隔の2回に分けて摂取します。例えば、牛乳10mlを摂取できるか検査する時はまず、3ml飲んで、30分間観察し、症状がなければ残りの7mlを飲むという手順です。アレルギー症状を認めたら、陽性と判断します。当院では15歳以下の食物経口負荷試験を外来にて行なっています。
(成人の負荷試験は熊本労災病院で木曜の午後に1泊2日で私が診療協力医として行います。)
負荷試験を行う目的は主に下記の2つです。
①食物アレルギー自体の診断・原因食物の特定
食物アレルギーの症状を起こした原因として疑われる食物を確定するために行います。複数の食品を摂取した後や複数の食品成分を含む加工品の摂取でアレルギー症状を発症した場合には再発防止のためにも原因となった食物の特定が重要です。
②食べることができる量の決定・治ったことの確認
まず乳幼児の食物アレルギーの原因食物の中には治りやすい食物があります。大豆、小麦、鶏卵、牛乳がその代表です。これらの食物は、たとえ食物アレルギーの原因食材でも、症状が出ない量(=安全摂取可能量)を日常生活の中で摂取していくことで、治る可能性が高まることが示唆されています。その安全に摂取できる量を決めるために、クリニックの中で、安全に食べることができるであろうと想定した量を実際に食べる検査を行います。症状を認めずに検査が終了した場合は検査結果:陰性として、同じ量以下で、ご自宅で摂取していただくことになります。また、その食材に対する食物アレルギーが治っていることを確認するため、年齢に応じた基準の量を負荷試験としてクリニック内で実際に食べることもあります。検査結果:陰性の場合は、日常生活でのその食物の除去が必要なくなることになります。
実際の負荷試験の記録になります。これは炒り卵 1.5g(卵1/20個分)の負荷試験の記録で、2回に分けて食べています。9:05に0.5g、9:43に1gを食べており、10:43に咳や喘鳴といった症状が出現しています。このように食べた後に症状が出ていないかを定期的に確認し、症状を認めた場合は治療を行います。
以上の検査の特徴を踏まえるとこのようになります。
食物アレルギーの診断においては、「何を食べて、どれくらいの時間が経ってから、何の症状が起こり、その症状がいつ消えたのか?」という病歴がとても大切です。検査よりも病歴が大事と言っても過言ではありません。ですから、食物アレルギーを心配され、受診されるときには病歴をしっかりメモにしていただくと早期に診断できる可能性が高まります。そして、病歴から原因食材を予測し、食物経口負荷試験により実際にアレルギーなのかどうかを確認します。血液検査やプリックテストはその過程で参考にします。
受診の際のポイント
アレルギーの診断の流れをこちらの動画にまとめました
湿疹の治療をすることも大切
食物アレルギーと湿疹は一見関係がないように思えるかもしれませんが、食物アレルギーの発症に湿疹が大きく関与していることが多々あります。下のイラストは、
・食物と皮膚の湿疹が接触すると食物アレルギーになりやすいこと
・食べて腸で食物と接触すると食物アレルギーになりにくくなること
を説明しています。
当院ではこの考え方をもとに、湿疹がある場合は軟膏治療をしっかり行い、見た目の赤みはもちろん、触れた時のツルツル・モチモチ感を大切にしています。また、食物経口負荷試験を行い、食べることができる量を決定し、ご自宅での食べ方を説明しています。
湿疹と食物アレルギーの関係についての院長動画はこちらから「食物アレルギーは皮膚から?!」
食物アレルギーの当院におけるアプローチ
お子さんの場合は、原因の食材によってはアレルギーだから全く食べないようにするというよりも、食べることができる量を負荷試験で確認し、その範囲で定期的に食べていくことが早く食物アレルギーを卒業できると示唆されています。負荷試験の結果や日常生活の中で食べている状況をお聞きし、具体的な資料を使いながら食べることができる量を相談します。
大人の場合は治すことは一般的には難しいので、アレルギーとなる食品を「食べないようにする」こととなります。
食物アレルギーの特殊型
1.食物依存性運動誘発アナフィラキシー
食べるだけ、または運動するだけでは症状は起こらず、食べて運動すると重症のアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こる疾患を食物依存性運動誘発アナフィラキシーといいます。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーの特徴をまとめました。原因としては小麦が最も多いです。日頃は摂取できているので、運動が引き金になることを知っていないと気づくことは難しいです。
2.花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)
生の果物・野菜を食べると、口の中や喉が食べた直後から痒くなるアレルギーです。このアレルギーが始まる原因となっているのが花粉へのアレルギーなのです。花粉と果物・野菜に構造のよく似た共通成分が含まれており、花粉に含まれるその共通成分にアレルギー反応が起こり始めると、構造のよく似た果物・野菜に含まれる共通成分にもアレルギー反応を起こすのです。
花粉-食物アレルギー症候群の特徴をまとめます。
特定の果物や野菜を摂取すると症状が起こるのに、その果物・野菜の血液検査は陰性ということが起こりえます。それはこの原因となっている花粉と果物・野菜の共通成分が熱や加工により壊れやすいからです。胃で消化されると壊れるので、全身の症状が少ないということも言えます。
なので、花粉の検査は血液検査で行い、果物・野菜の検査は血液検査だけではなく、生の果物・野菜での皮膚テストを行うと陽性が出やすいです。次の当院の例ではトマト・スイカの血液検査は陽性ではないですが、皮膚テストでは大きな蕁麻疹を認め、強陽性の判定でした。
食物アレルギーと蕁麻疹の関係
蕁麻疹を見ると、食物アレルギーが原因にあると思う方は多いと思います。食物アレルギーの症状の90%に蕁麻疹を認めるからです。しかし、蕁麻疹から見ると、蕁麻疹の原因として食物アレルギーが占める割合はたった5%だけです。
ということで、繰り返しになりますが、先ほどの「受診の際のポイント」を踏まえて、その蕁麻疹が食物アレルギーなのか、ただの蕁麻疹なのかを考える必要があります。