アナフィラキシーとは
アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入により、複数の臓器に全身性のアレルギー症状が引き起こされ、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義されています。この反応は、アレルギーの原因となる食品や物質が体内に侵入(食べる、刺される、投薬されるなど)した際に引き起こされ、通常は2つ以上の症状が急速に進行します。重篤な全身性の過敏反応であり、死に至ることもあります。
アナフィラキシーの症状と診断
アナフィラキシーの症状には起こりやすさがあり、特に皮膚の症状である蕁麻疹が最も一般的で、アナフィラキシーを起こした患者様の約90%で蕁麻疹を認めています。具体的にアナフィラキシーが起きた時にその症状を認めた割合は以下の通りです。
アナフィラキシーの症状かどうかを考える際には、90%で出現する蕁麻疹に注目すると分かりやすくなります。咳やぐったりなど、もう1つの症状がないか確認しましょう。ただし、蕁麻疹がない場合、アナフィラキシーの診断は難しいこともあります。特にお子さんは自分の症状を適切に表現することが難しいため、アナフィラキシーの症状の有無を1つずつ聴いて、「はい、いいえ」で答えられる具体的な質問をすることが重要です。ガイドラインに記載されている医療者がアナフィラキシーと診断する基準は以下の通りです。蕁麻疹がある場合とない場合の2つの基準があります。
アナフィラキシーの症状と診断
小学校~高校を対象にした調査では、全体の4.5%の生徒が食物アレルギーを持ち、0.5%がアナフィラキシーを経験していました(文部科学省 平成25年度 学校生活における健康管理に関する調査事業 報告書)。
また、別の調査ではアナフィラキシーショックによる死亡の主な原因は1.医薬品、2.ハチの刺傷、3.食物 の順番です。2010年から2020年のまとめを示します。有事に備えて、日頃から対応できるようにしておかなければなりません。
アナフィラキシーの危険な症状は窒息とショック(血圧低下)で、これらが死亡原因の約90%を占めます。蕁麻疹が出現し、「咳が続く」「声が変わった」「ぐったりしている」などの症状がある場合、それはアナフィラキシーの中でも危険なサインです。これらの反応は急速に進行しますので、迷わずエピペン接種+119番通報です。
亡くなられた症例の検討では、症状が現れてから、死に至るまでの時間は非常に短く、薬物では5分、遅い食物でも30分です。迅速な判断・対応が求められます。
アナフィラキシーの治療
アナフィラキシーから救命できる唯一の薬剤は「エピペン」という自己注射薬です。これはご自身または周囲の方が使用することを想定しています。内服薬には命に関わる呼吸症状とショックに対する効果がありません。アナフィラキシーの症状と思う、または迷った時点でエピペンを投与します。当院では解説動画を見た後に一緒に練習します。
アトピー性皮膚炎の特徴
アトピー性皮膚炎の診断の基準をご紹介します。

① かゆみ:受診の動機となるつらい症状の1つです。学習障害や労働生産性の低下を招くなど日常生活に悪い影響を与えます。さらに、強いかゆみは睡眠障害となり、うつ病、不安、自殺願望などの原因となることもあります。
痒みがあり掻くことで、皮膚のバリア機能が低下し、汗やアレルゲンといった外部刺激に弱くなり炎症が起こりやすくなります。また、掻くこと自体が炎症を悪化させる物質を発生させるので、更に皮膚の赤みや腫れといった炎症は強くなり、更に痒くなります。痒くなり掻くことでアトピー性皮膚炎は悪循環に陥ってしまいます。
② 特徴的皮疹と分布:湿疹が左右対称に現れますが、年齢により起こりやすい部位が変化します。

  1. 乳児期(2歳未満):顔から始まり、次第に首、肘、膝に広がる。
  2. 幼児期~学童期(2~12歳):顔面の湿疹は減少。首、腋、肘、膝、手首、足首に湿疹を認めることが多くなる。
  3. 思春期以降・成人期(13歳以上):顔、首、胸、背中などの上半身に湿疹が強く見られるようになる。

③ 慢性・反復性経過:湿疹は悪化したり改善したりしながら6ヶ月以上(乳児の場合は2ヶ月以上)持続する。

このようなアトピー性皮膚炎の特徴を考慮に入れつつ、医師は問診を行い、患者本人またはご家族のアレルギー疾患の歴史を参考にします。アレルギー疾患は1人の体内でも、また世代間でも連鎖しやすい性質を持っています。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎は複数の要因が複雑に絡み合う疾患であり、多方面からのアプローチが必要です。①薬物治療、②スキンケア、③悪化因子の特定と対策、といった3点が治療の基本となります。ここでは、薬物治療の概略についてお話しします。

薬物治療:アトピー性皮膚炎の炎症(皮膚の赤みや腫れ)を改善するのが薬物治療の大きな目的です。薬物治療を行うにあたって、“寛解導入”と“寛解維持”という治療の時期を意識することが大切です。寛解とはザラザラや痒み、炎症がない皮膚で、正常の皮膚の状態です。湿疹を正常の皮膚の状態にするのが“寛解導入”です。皆さんもよく経験されたことがあるかもしれませんが、お薬を塗ってよくなったので、塗るのをやめるとすぐにまた湿疹が出てくることがあります。湿疹が再発しないように治療を継続するのが“寛解維持”です。“寛解導入”は速やかに達成し、“寛解維持”では必要最低限のお薬で正常の皮膚の状態を維持し続けることを目指します。ステロイドを使用する場合は、“寛解導入”では毎日塗布して、ツルツルの皮膚にし、その後、“寛解維持”としてステロイド軟膏を塗る日の間隔をあけ、湿疹がない状態の時も定期的に塗布を続けます。これをプロアクティブ療法といいます。大事なこととして、寛解維持の期間に湿疹が再発したら、寛解導入の治療に切り替える必要があります。
薬物治療で使用する軟膏にはステロイド軟膏と、炎症を改善するステロイド以外の3種類の軟膏があります。ステロイド軟膏には強さが5段階あり、湿疹の重症度と塗布する部位により使い分けます。簡単にまとめると次のイメージです。
ここでとても重要なことですが、軟膏の強さや塗布する部位以外に、治療効果に関わる大切なことがあります。そして、それは医療者ではなく、皆さんにやっていただきたいことです。それは、たっぷりの量を塗ってもらうことです。
適切な塗布量は
「人差し指の第一関節分の軟膏(1FTU)」→「手の平1枚分の面積」(25g以上のチューブは手の平2枚分)
このような量で塗布すると、3~6ヶ月の赤ちゃんの全身に塗布するのには、1回の塗布毎に5gチューブ約1本分の軟膏が必要です。塗った後にすごくベタベタにならないと、治療効果が得られないことがあります。
この量を強く擦り込むのではなく、皮膚にやさしく塗り伸ばすことが大切です。適切な量を塗布することで、多くの場合、皮膚の炎症は数日で改善します。
しかし、一部の重症の方になると、軟膏治療では寛解導入や寛解維持が難しいことがあります。その場合は、保険診療でも高額にはなりますが、注射剤や内服薬を使用することがあります。
乳児のお子様の湿疹は食物アレルギーの発症に影響を与えますので、積極的に取り組んでください。
湿疹と食物アレルギーの関係についての院長動画はこちらです
アレルギー性鼻炎とは
鼻粘膜で起こるⅠ型アレルギーの疾患で、突然の反復するくしゃみ・水のようなサラサラの鼻汁・鼻づまりが主な症状です。
症状が出る時期や原因により「通年性」と「季節性」に分類されます。通年性の主な原因はダニです。秋にピークはあるものの1年を通して症状が起こります。季節性の主な原因は花粉です。その花粉が飛散する時期のみ症状が起こります。
2019年の調査では国民の40%近くがスギ花粉症、25%がダニアレルギーでした。しかも、この割合は年々増加傾向です。
アレルギー性鼻炎の治療
薬物治療は内服薬と点鼻薬があります。どの薬剤がどの症状( 鼻汁または鼻づまり) に効果があるかを意識しながら選択します。一般的にアレルギー薬と言われる抗ヒスタミン薬は鼻汁に効果が高く、鼻づまりへの効果は高くありません。点鼻ステロイドは鼻汁と鼻づまりの両方に効果があります。
市販の点鼻薬は鼻づまりへの即効性がありますが、効果の持続は短く、1 日に何度も使用し続けると、逆に薬剤性の鼻づまりになってしまいますので、短期間の使用に留めましょう。
舌下免疫療法とは
当院では舌下免疫療法をオススメしています。アレルギーの原因となっている物質の錠剤を舌の下に1 分間置くことを毎日続けて、アレルギー反応が起こらない体質に変えていく治療です。特に次のような方にオススメです。

・お薬だけでは、症状がまだつらい
・お薬の副作用の眠気に困っている
・お薬を何年も内服することが心配 ( アレルギー性鼻炎は成人しても継続することが多い)

舌下免疫療法はダニアレルギーとスギによる花粉症が対象です。効果を認めるのには半年以上かかり、3年間は頑張ってほしい治療です。
当クリニックでは舌下免疫療法の導入を積極的に行っており、看護師がワンツーマンで説明・練習します。
ぜひ一度ご相談ください。
アレルギー性鼻炎の治療の重要性
アレルギー性鼻炎は、生活の質の低下や学習障害から経済的な損失まで、さまざまな影響を及ぼします。
また、アレルギー性鼻炎が存在すると喘息の発症率が高まるという報告もあります。このような観点からも、アレルギー性鼻炎の適切な治療は非常に重要と言えます。
蕁麻疹とは
蕁麻疹とは、蚊に刺されたような赤みを伴う腫れが一時的に、痒みを伴って出没する疾患です。この場合の“一時的” とは24 時間以内に消失するということです。湿疹は翌日も同じ場所に残っていますが、蕁麻疹は違う場所に新たに出ることはあっても同じ場所には翌日はもうありません。
蕁麻疹の原因による分類
蕁麻疹といえば、アレルギー反応、特に食物アレルギーという印象をお持ちかもしれませんが、蕁麻疹の原因として最も多いのは、原因不明です。特に原因がなく、夕方から夜、入浴後や運動後などの体が温まった時に出やすいといった特徴があります。原因不明のことを医学用語で特発性と言いますが、特発性の蕁麻疹が蕁麻疹全体の3/4を占めています。原因がある=刺激誘発型の蕁麻疹は蕁麻疹全体の1/4となります。
特発性蕁麻疹の分類
特発性蕁麻疹は発症してから6週間以内の急性と、6 週間以上経過した慢性に分類されます。この分類の大きな意味は、急性蕁麻疹は1 ヶ月以内に治癒することが多く、慢性蕁麻疹は治癒するまで数年かかることもあります。
蕁麻疹と食物アレルギーの関係
蕁麻疹を見ると食物アレルギーが原因として心配になりますが、それは、食物アレルギーの約90%で蕁麻疹を認めるからです。しかし、逆に蕁麻疹からすると、食物アレルギーが原因となっているのは5% と少ない割合となっています。
その蕁麻疹の原因が食物アレルギーかどうかを考える際には、2時間以内に食べたものからまずは考えます。繰り返し蕁麻疹が起こっている時は、その前に必ず同じ食材を食べています。その起こり方に特徴がない蕁麻疹は、むやみに検査を繰り返さないようガイドラインにも記載があります。
消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)
一般的な食物アレルギーとは全く異なる疾患です。特定の食べ物を摂取すると症状が起こる点は食物アレルギーとの共通点です。消化管アレルギーにも分類がありますが、ここでは、当院に受診することがある急性タイプについて説明します。
症状としては、原因食物の摂取1~4 時間後に激しい嘔吐を繰り返します。蕁麻疹を認めないことが特徴です。重症の場合には、意識が低下し、ぐったりとなります。
2018 年ごろより急激に増えてきた新しい疾患で、まだわからないことも多くあります。現在のところ、保険診療では検査や治療薬はありません。食物アレルギーと比較してまとめると次のようになります。
よくある症例としては、「月齢6ヶ月で離乳食を開始し、卵黄の摂取を2g から始め、順調に進めていた。
卵黄8g 摂取した3 時間後から、突然、何度も嘔吐し始め、ぐったりしてしまった。この時は胃腸炎と思い、1週間後に再度卵黄8g を摂取すると、同様に繰り返し激しく嘔吐し、ぐったりしたので受診した。」となります。
肺気腫
タバコの煙で肺が壊されていく病気です。写真のように正常の肺は吸いこんだ空気が入る小さな部屋が無数にありますが、肺気腫ではこの部屋の壁が壊れて、大きな部屋となり、多数の空洞ができます。
肺気腫は喘息との区別が難しい疾患です。過去も含めて喫煙の経験があり、階段の昇り降りの動作での呼吸苦が最初の症状となります。喘息と同じように肺機能検査が診断と重症度の決め手になります。治療は気管支を拡げる薬剤の吸入になりますが、壊れてしまった肺は元には戻りません。一日も早い禁煙が何より大切です。喫煙をされていて階段を昇ると最近息切れがひどくなったという方には、肺機能検査をお薦めします。
また、肺癌の発症率も増加しますので、定期的なレントゲン・CT 検査をお薦めします。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, SAS)は、睡眠中に繰り返し無呼吸が発生し、その結果、日中の眠気や集中力低下、さらには重大な健康問題を引き起こす可能性がある疾患です
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、主に睡眠中に起こる無呼吸により、睡眠の質が低下し、昼間の眠気、無気力、集中力の低下などの症状が出る病態です。この症状は、日々の生活に大きな影響を及ぼすだけでなく、無治療のまま放置すると心血管疾患や脳卒中といった生活習慣病のリスク、日中の眠気による居眠り運転・交通事故の危険性も高まると考えられています。
睡眠時無呼吸症候群の原因と症状
主な原因は、睡眠中に気道が狭くなり、閉じてしまうことです。
気道が狭くなる要因としては、生まれつきの身体の構造、鼻炎の鼻づまりによるもの、肥満など生活習慣によるものがあります。
これにより、一時的に呼吸が停止(無呼吸)または浅くなる(低呼吸)ことが頻繁に発生します。このような呼吸の停止や低下が一晩に数十回から数百回にも及ぶ場合があり、その度に脳は酸素不足により一時的に覚醒します。これらの頻繁な覚醒により、睡眠の質が低下し、日中の眠気や集中力の低下、頭痛、無気力感などの症状が出ます。
睡眠時無呼吸症候群の診断と治療
睡眠時無呼吸症候群の診断はご自宅で簡単に受けることができます。
専用の機器をお貸ししますので、ご自宅で機器をつけて一晩寝ていただきます。寝ている間に機器が酸素飽和度や無呼吸の回数といったデータを収集しますので、機器をご返却頂いたらご来院いただき、結果をご説明させていただきます。
症状の程度によっては、より精密な検査を紹介することがあります。

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は治療を開始します。
治療方法は、症状の重症度や原因により異なりますが、主にCPAP(在宅持続陽圧呼吸器)療法が一般的に行われます。CPAP 療法は、特殊なマスクを通じて一定の空気圧を維持し、気道を開放して無呼吸を防ぎます。
また、根本の治療としては気道を広げるということになりますので、CPAP 療法を行いながら、生活習慣の改善も同時に行なうと良いでしょう。

小さなお子さんの場合はアデノイドの肥大など、別の要因が疑われ、手術という選択肢をご紹介させていただきます。
〒866-0883 熊本県八代市松江町485-1
お問い合わせ 0965-37-8211
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アナフィラキシーとは
アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入により、複数の臓器に全身性のアレルギー症状が引き起こされ、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義されています。この反応は、アレルギーの原因となる食品や物質が体内に侵入(食べる、刺される、投薬されるなど)した際に引き起こされ、通常は2つ以上の症状が急速に進行します。重篤な全身性の過敏反応であり、死に至ることもあります。
アナフィラキシーの症状と診断
アナフィラキシーの症状には起こりやすさがあり、特に皮膚の症状である蕁麻疹が最も一般的で、アナフィラキシーを起こした患者様の約90%で蕁麻疹を認めています。具体的にアナフィラキシーが起きた時にその症状を認めた割合は以下の通りです。
アナフィラキシーの症状かどうかを考える際には、90%で出現する蕁麻疹に注目すると分かりやすくなります。咳やぐったりなど、もう1つの症状がないか確認しましょう。ただし、蕁麻疹がない場合、アナフィラキシーの診断は難しいこともあります。特にお子さんは自分の症状を適切に表現することが難しいため、アナフィラキシーの症状の有無を1つずつ聴いて、「はい、いいえ」で答えられる具体的な質問をすることが重要です。ガイドラインに記載されている医療者がアナフィラキシーと診断する基準は以下の通りです。蕁麻疹がある場合とない場合の2つの基準があります。
アナフィラキシーの症状と診断
小学校~高校を対象にした調査では、全体の4.5%の生徒が食物アレルギーを持ち、0.5%がアナフィラキシーを経験していました(文部科学省 平成25年度 学校生活における健康管理に関する調査事業 報告書)。
また、別の調査ではアナフィラキシーショックによる死亡の主な原因は1.医薬品、2.ハチの刺傷、3.食物 の順番です。2010年から2020年のまとめを示します。有事に備えて、日頃から対応できるようにしておかなければなりません。
アナフィラキシーの危険な症状は窒息とショック(血圧低下)で、これらが死亡原因の約90%を占めます。蕁麻疹が出現し、「咳が続く」「声が変わった」「ぐったりしている」などの症状がある場合、それはアナフィラキシーの中でも危険なサインです。これらの反応は急速に進行しますので、迷わずエピペン接種+119番通報です。
亡くなられた症例の検討では、症状が現れてから、死に至るまでの時間は非常に短く、薬物では5分、遅い食物でも30分です。迅速な判断・対応が求められます。
アナフィラキシーの治療
アナフィラキシーから救命できる唯一の薬剤は「エピペン」という自己注射薬です。これはご自身または周囲の方が使用することを想定しています。内服薬には命に関わる呼吸症状とショックに対する効果がありません。アナフィラキシーの症状と思う、または迷った時点でエピペンを投与します。当院では解説動画を見た後に一緒に練習します。
アトピー性皮膚炎の特徴
アトピー性皮膚炎の診断の基準をご紹介します。

① かゆみ:受診の動機となるつらい症状の1つです。学習障害や労働生産性の低下を招くなど日常生活に悪い影響を与えます。さらに、強いかゆみは睡眠障害となり、うつ病、不安、自殺願望などの原因となることもあります。
痒みがあり掻くことで、皮膚のバリア機能が低下し、汗やアレルゲンといった外部刺激に弱くなり炎症が起こりやすくなります。また、掻くこと自体が炎症を悪化させる物質を発生させるので、更に皮膚の赤みや腫れといった炎症は強くなり、更に痒くなります。痒くなり掻くことでアトピー性皮膚炎は悪循環に陥ってしまいます。
② 特徴的皮疹と分布:湿疹が左右対称に現れますが、年齢により起こりやすい部位が変化します。

  1. 乳児期(2歳未満):顔から始まり、次第に首、肘、膝に広がる。
  2. 幼児期~学童期(2~12歳):顔面の湿疹は減少。首、腋、肘、膝、手首、足首に湿疹を認めることが多くなる。
  3. 思春期以降・成人期(13歳以上):顔、首、胸、背中などの上半身に湿疹が強く見られるようになる。

③ 慢性・反復性経過:湿疹は悪化したり改善したりしながら6ヶ月以上(乳児の場合は2ヶ月以上)持続する。

このようなアトピー性皮膚炎の特徴を考慮に入れつつ、医師は問診を行い、患者本人またはご家族のアレルギー疾患の歴史を参考にします。アレルギー疾患は1人の体内でも、また世代間でも連鎖しやすい性質を持っています。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎は複数の要因が複雑に絡み合う疾患であり、多方面からのアプローチが必要です。①薬物治療、②スキンケア、③悪化因子の特定と対策、といった3点が治療の基本となります。ここでは、薬物治療の概略についてお話しします。

薬物治療:アトピー性皮膚炎の炎症(皮膚の赤みや腫れ)を改善するのが薬物治療の大きな目的です。薬物治療を行うにあたって、“寛解導入”と“寛解維持”という治療の時期を意識することが大切です。寛解とはザラザラや痒み、炎症がない皮膚で、正常の皮膚の状態です。湿疹を正常の皮膚の状態にするのが“寛解導入”です。皆さんもよく経験されたことがあるかもしれませんが、お薬を塗ってよくなったので、塗るのをやめるとすぐにまた湿疹が出てくることがあります。湿疹が再発しないように治療を継続するのが“寛解維持”です。“寛解導入”は速やかに達成し、“寛解維持”では必要最低限のお薬で正常の皮膚の状態を維持し続けることを目指します。ステロイドを使用する場合は、“寛解導入”では毎日塗布して、ツルツルの皮膚にし、その後、“寛解維持”としてステロイド軟膏を塗る日の間隔をあけ、湿疹がない状態の時も定期的に塗布を続けます。これをプロアクティブ療法といいます。大事なこととして、寛解維持の期間に湿疹が再発したら、寛解導入の治療に切り替える必要があります。
薬物治療で使用する軟膏にはステロイド軟膏と、炎症を改善するステロイド以外の3種類の軟膏があります。ステロイド軟膏には強さが5段階あり、湿疹の重症度と塗布する部位により使い分けます。簡単にまとめると次のイメージです。
ここでとても重要なことですが、軟膏の強さや塗布する部位以外に、治療効果に関わる大切なことがあります。そして、それは医療者ではなく、皆さんにやっていただきたいことです。それは、たっぷりの量を塗ってもらうことです。
適切な塗布量は
「人差し指の第一関節分の軟膏(1FTU)」→「手の平1枚分の面積」(25g以上のチューブは手の平2枚分)
このような量で塗布すると、3~6ヶ月の赤ちゃんの全身に塗布するのには、1回の塗布毎に5gチューブ約1本分の軟膏が必要です。塗った後にすごくベタベタにならないと、治療効果が得られないことがあります。
この量を強く擦り込むのではなく、皮膚にやさしく塗り伸ばすことが大切です。適切な量を塗布することで、多くの場合、皮膚の炎症は数日で改善します。
しかし、一部の重症の方になると、軟膏治療では寛解導入や寛解維持が難しいことがあります。その場合は、保険診療でも高額にはなりますが、注射剤や内服薬を使用することがあります。
乳児のお子様の湿疹は食物アレルギーの発症に影響を与えますので、積極的に取り組んでください。
湿疹と食物アレルギーの関係についての院長動画はこちらです
アレルギー性鼻炎とは
鼻粘膜で起こるⅠ型アレルギーの疾患で、突然の反復するくしゃみ・水のようなサラサラの鼻汁・鼻づまりが主な症状です。
症状が出る時期や原因により「通年性」と「季節性」に分類されます。通年性の主な原因はダニです。秋にピークはあるものの1年を通して症状が起こります。季節性の主な原因は花粉です。その花粉が飛散する時期のみ症状が起こります。
2019年の調査では国民の40%近くがスギ花粉症、25%がダニアレルギーでした。しかも、この割合は年々増加傾向です。
アレルギー性鼻炎の治療
薬物治療は内服薬と点鼻薬があります。どの薬剤がどの症状( 鼻汁または鼻づまり) に効果があるかを意識しながら選択します。一般的にアレルギー薬と言われる抗ヒスタミン薬は鼻汁に効果が高く、鼻づまりへの効果は高くありません。点鼻ステロイドは鼻汁と鼻づまりの両方に効果があります。
市販の点鼻薬は鼻づまりへの即効性がありますが、効果の持続は短く、1 日に何度も使用し続けると、逆に薬剤性の鼻づまりになってしまいますので、短期間の使用に留めましょう。
舌下免疫療法とは
当院では舌下免疫療法をオススメしています。アレルギーの原因となっている物質の錠剤を舌の下に1 分間置くことを毎日続けて、アレルギー反応が起こらない体質に変えていく治療です。特に次のような方にオススメです。

・お薬だけでは、症状がまだつらい
・お薬の副作用の眠気に困っている
・お薬を何年も内服することが心配 ( アレルギー性鼻炎は成人しても継続することが多い)

舌下免疫療法はダニアレルギーとスギによる花粉症が対象です。効果を認めるのには半年以上かかり、3年間は頑張ってほしい治療です。
当クリニックでは舌下免疫療法の導入を積極的に行っており、看護師がワンツーマンで説明・練習します。
ぜひ一度ご相談ください。
アレルギー性鼻炎の治療の重要性
アレルギー性鼻炎は、生活の質の低下や学習障害から経済的な損失まで、さまざまな影響を及ぼします。
また、アレルギー性鼻炎が存在すると喘息の発症率が高まるという報告もあります。このような観点からも、アレルギー性鼻炎の適切な治療は非常に重要と言えます。
蕁麻疹とは
蕁麻疹とは、蚊に刺されたような赤みを伴う腫れが一時的に、痒みを伴って出没する疾患です。この場合の“一時的” とは24 時間以内に消失するということです。湿疹は翌日も同じ場所に残っていますが、蕁麻疹は違う場所に新たに出ることはあっても同じ場所には翌日はもうありません。
蕁麻疹の原因による分類
蕁麻疹といえば、アレルギー反応、特に食物アレルギーという印象をお持ちかもしれませんが、蕁麻疹の原因として最も多いのは、原因不明です。特に原因がなく、夕方から夜、入浴後や運動後などの体が温まった時に出やすいといった特徴があります。原因不明のことを医学用語で特発性と言いますが、特発性の蕁麻疹が蕁麻疹全体の3/4を占めています。原因がある=刺激誘発型の蕁麻疹は蕁麻疹全体の1/4となります。
特発性蕁麻疹の分類
特発性蕁麻疹は発症してから6週間以内の急性と、6 週間以上経過した慢性に分類されます。この分類の大きな意味は、急性蕁麻疹は1 ヶ月以内に治癒することが多く、慢性蕁麻疹は治癒するまで数年かかることもあります。
蕁麻疹と食物アレルギーの関係
蕁麻疹を見ると食物アレルギーが原因として心配になりますが、それは、食物アレルギーの約90%で蕁麻疹を認めるからです。しかし、逆に蕁麻疹からすると、食物アレルギーが原因となっているのは5% と少ない割合となっています。
その蕁麻疹の原因が食物アレルギーかどうかを考える際には、2時間以内に食べたものからまずは考えます。繰り返し蕁麻疹が起こっている時は、その前に必ず同じ食材を食べています。その起こり方に特徴がない蕁麻疹は、むやみに検査を繰り返さないようガイドラインにも記載があります。
消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)
一般的な食物アレルギーとは全く異なる疾患です。特定の食べ物を摂取すると症状が起こる点は食物アレルギーとの共通点です。消化管アレルギーにも分類がありますが、ここでは、当院に受診することがある急性タイプについて説明します。
症状としては、原因食物の摂取1~4 時間後に激しい嘔吐を繰り返します。蕁麻疹を認めないことが特徴です。重症の場合には、意識が低下し、ぐったりとなります。
2018 年ごろより急激に増えてきた新しい疾患で、まだわからないことも多くあります。現在のところ、保険診療では検査や治療薬はありません。食物アレルギーと比較してまとめると次のようになります。
よくある症例としては、「月齢6ヶ月で離乳食を開始し、卵黄の摂取を2g から始め、順調に進めていた。
卵黄8g 摂取した3 時間後から、突然、何度も嘔吐し始め、ぐったりしてしまった。この時は胃腸炎と思い、1週間後に再度卵黄8g を摂取すると、同様に繰り返し激しく嘔吐し、ぐったりしたので受診した。」となります。
肺気腫
タバコの煙で肺が壊されていく病気です。写真のように正常の肺は吸いこんだ空気が入る小さな部屋が無数にありますが、肺気腫ではこの部屋の壁が壊れて、大きな部屋となり、多数の空洞ができます。
肺気腫は喘息との区別が難しい疾患です。過去も含めて喫煙の経験があり、階段の昇り降りの動作での呼吸苦が最初の症状となります。喘息と同じように肺機能検査が診断と重症度の決め手になります。治療は気管支を拡げる薬剤の吸入になりますが、壊れてしまった肺は元には戻りません。一日も早い禁煙が何より大切です。喫煙をされていて階段を昇ると最近息切れがひどくなったという方には、肺機能検査をお薦めします。
また、肺癌の発症率も増加しますので、定期的なレントゲン・CT 検査をお薦めします。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, SAS)は、睡眠中に繰り返し無呼吸が発生し、その結果、日中の眠気や集中力低下、さらには重大な健康問題を引き起こす可能性がある疾患です
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、主に睡眠中に起こる無呼吸により、睡眠の質が低下し、昼間の眠気、無気力、集中力の低下などの症状が出る病態です。この症状は、日々の生活に大きな影響を及ぼすだけでなく、無治療のまま放置すると心血管疾患や脳卒中といった生活習慣病のリスク、日中の眠気による居眠り運転・交通事故の危険性も高まると考えられています。
睡眠時無呼吸症候群の原因と症状
主な原因は、睡眠中に気道が狭くなり、閉じてしまうことです。
気道が狭くなる要因としては、生まれつきの身体の構造、鼻炎の鼻づまりによるもの、肥満など生活習慣によるものがあります。
これにより、一時的に呼吸が停止(無呼吸)または浅くなる(低呼吸)ことが頻繁に発生します。このような呼吸の停止や低下が一晩に数十回から数百回にも及ぶ場合があり、その度に脳は酸素不足により一時的に覚醒します。これらの頻繁な覚醒により、睡眠の質が低下し、日中の眠気や集中力の低下、頭痛、無気力感などの症状が出ます。
睡眠時無呼吸症候群の診断と治療
睡眠時無呼吸症候群の診断はご自宅で簡単に受けることができます。
専用の機器をお貸ししますので、ご自宅で機器をつけて一晩寝ていただきます。寝ている間に機器が酸素飽和度や無呼吸の回数といったデータを収集しますので、機器をご返却頂いたらご来院いただき、結果をご説明させていただきます。
症状の程度によっては、より精密な検査を紹介することがあります。

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は治療を開始します。
治療方法は、症状の重症度や原因により異なりますが、主にCPAP(在宅持続陽圧呼吸器)療法が一般的に行われます。CPAP 療法は、特殊なマスクを通じて一定の空気圧を維持し、気道を開放して無呼吸を防ぎます。
また、根本の治療としては気道を広げるということになりますので、CPAP 療法を行いながら、生活習慣の改善も同時に行なうと良いでしょう。

小さなお子さんの場合はアデノイドの肥大など、別の要因が疑われ、手術という選択肢をご紹介させていただきます。
〒866-0883 熊本県八代市松江町485-1
お問い合わせ 0965-37-8211
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