② 特徴的皮疹と分布:湿疹が左右対称に現れますが、年齢により起こりやすい部位が変化します。
- 乳児期(2歳未満):顔から始まり、次第に首、肘、膝に広がる。
- 幼児期~学童期(2~12歳):顔面の湿疹は減少。首、腋、肘、膝、手首、足首に湿疹を認めることが多くなる。
- 思春期以降・成人期(13歳以上):顔、首、胸、背中などの上半身に湿疹が強く見られるようになる。
③ 慢性・反復性経過:湿疹は悪化したり改善したりしながら6ヶ月以上(乳児の場合は2ヶ月以上)持続する。
このようなアトピー性皮膚炎の特徴を考慮に入れつつ、医師は問診を行い、患者本人またはご家族のアレルギー疾患の歴史を参考にします。アレルギー疾患は1人の体内でも、また世代間でも連鎖しやすい性質を持っています。
アトピー性皮膚炎は複数の要因が複雑に絡み合う疾患であり、多方面からのアプローチが必要です。①薬物治療、②スキンケア、③悪化因子の特定と対策、といった3点が治療の基本となります。ここでは、薬物治療の概略についてお話しします。
薬物治療:アトピー性皮膚炎の炎症(皮膚の赤みや腫れ)を改善するのが薬物治療の大きな目的です。薬物治療を行うにあたって、“寛解導入”と“寛解維持”という治療の時期を意識することが大切です。寛解とはザラザラや痒み、炎症がない皮膚で、正常の皮膚の状態です。湿疹を正常の皮膚の状態にするのが“寛解導入”です。皆さんもよく経験されたことがあるかもしれませんが、お薬を塗ってよくなったので、塗るのをやめるとすぐにまた湿疹が出てくることがあります。湿疹が再発しないように治療を継続するのが“寛解維持”です。“寛解導入”は速やかに達成し、“寛解維持”では必要最低限のお薬で正常の皮膚の状態を維持し続けることを目指します。ステロイドを使用する場合は、“寛解導入”では毎日塗布して、ツルツルの皮膚にし、その後、“寛解維持”としてステロイド軟膏を塗る日の間隔をあけ、湿疹がない状態の時も定期的に塗布を続けます。これをプロアクティブ療法といいます。大事なこととして、寛解維持の期間に湿疹が再発したら、寛解導入の治療に切り替える必要があります。
薬物治療で使用する軟膏にはステロイド軟膏と、炎症を改善するステロイド以外の3種類の軟膏があります。ステロイド軟膏には強さが5段階あり、湿疹の重症度と塗布する部位により使い分けます。簡単にまとめると次のイメージです。
ここでとても重要なことですが、軟膏の強さや塗布する部位以外に、治療効果に関わる大切なことがあります。そして、それは医療者ではなく、皆さんにやっていただきたいことです。それは、たっぷりの量を塗ってもらうことです。
このような量で塗布すると、3~6ヶ月の赤ちゃんの全身に塗布するのには、1回の塗布毎に5gチューブ約1本分の軟膏が必要です。塗った後にすごくベタベタにならないと、治療効果が得られないことがあります。