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以前、診断のゴールドスタンダードと触れた食物経口負荷試験です。アレルギーが疑われる食品を、一定の時間間隔で分割摂取させて、症状の出現の有無、程度を観察する検査です。負荷試験を行う目的は主に下記の2つです。
①食物アレルギー自体の診断・原因食物の特定
②治ったことの確認・食べることができる量の決定
①食物アレルギー自体の診断・原因食物の特定について
乳児湿疹などで乳児期に血液検査を行い、抗体が陽性となった食物の除去の指示がでて、未摂取となっている状況で本当に食物アレルギーなのかを診断するために負荷試験を行うことが実際には多いです。また、食物アレルギーの症状が出たが、原因食品と疑われるものが複数ある場合です。どの食品が原因かを特定するために行います。
前提として血液検査では食物アレルギーの診断はできないのです。
上記は複数の除去食品がある食物アレルギー児が専門病院に紹介された結果です。縦軸には抗体のクラス、横軸は人数です。薄いグレーが負荷試験でその食品がアレルギーでないことが証明でき、濃いグレーが本当にアレルギーだった児です。大豆はクラス3や4でも半分以上の児が大豆アレルギーではなく、食べることができています。牛肉に至ってはこの報告では全員が抗体の有無に関わらず、食べることができています。逆に抗体が陰性でも、その食品に対するアレルギーのこともあります。抗体だけでの診断はできないのはこのためです。
上記のようにゴマは負荷試験陽性者と陰性者でゴマに対する抗体の値に差がありません。縦軸が抗体の値です。
例外的にはピーナッツアレルギーにおけるAra h 2に対する抗体があります。Ara h 2はピーナッツに含まれるタンパク質の1つで、これに対する抗体が高値の場合は95%以上の確率でアレルギー反応が起こるので負荷試験はできません。今後このような血液検査で診断できる抗体が増えてくるでしょうが、現時点では例外です。
②治ったことの確認・食べることができる量の決定
まず子供の食物アレルギーには治りやすい食品があります。
大豆、小麦、鶏卵、牛乳は治っていく可能性が高いので、抗体の値が低下してくるようなら、確認の負荷試験は有用です。食品によって治りやすい・治りにくいがあるのですね。
ただいきなり治ったことを確認する量を食べるのはリスクがあります。卵なら1個、小麦ならうどん200g、牛乳なら200mlが治ったとする目安の量ですが、量が多いのでアレルギーが治っていないなら、大きなアレルギー症状が起きるリスクがあります。ですから、ステップを踏む必要があります。
順調に卵の負荷試験を進めた症例です。グラフは抗体の値の推移です。このように1回の負荷試験の卵の量を段階的に増やしていき、大きなアレルギー症状の出現のリスクを抑えます。抗体の値の低下も認め、食べることができそうな印象がしました。
牛乳の負荷試験で陽性を示した症例です。シチューで陽性を示していますが、だからといって除去にするのではなく、その前の段階のビスケットの量は定期的に摂取してもらうことが重要です。そして、次のチャレンジで同量をクリアしています。
それが、食べることができる量を決めることの重要性に繋がります。なぜなら、完全に除去をするよりも、微量でも食べることができる量を定期的に食べたほうが治りやすいことが言われています。下記のグラフはきちんと細やかな指導をして定期的に食べれる量を食べ、少しずつ食べれる量を増やしていった群はそうでない群より1年後に食べることができる卵の量が多かったことを示した研究結果です。
以上、負荷試験の目的でした。下記のようにガイドラインでも言われており、今回のまとめです。