「喘息は突然ぜぇぜぇして、息が苦しくなる病気」というのは有名なことだと思います。しかし、症状がなくても毎日吸入しないといけないことは、小学校の先生方対象の勉強会のアンケートでもまだ浸透していないようでした。食物アレルギーの対応に追われ、喘息のことは忘れがちなのかなぁとも思います。医師の学会である小児アレルギー学会でも喘息を抜いて、食物アレルギーの発表が一番多くなりました。
喘息は気管支が狭くなり、ぜぇぜぇと息が苦しくなります、それもいつもではなく、突然やってきます。原因は沢山あります。
こういう発作のとき、吸入薬を使用すると改善するのは皆様ご存知のことと思います。
これは何をしているかというと、気管支を拡張させています。いわゆる気管支拡張薬です。即効性がありますが、効果は一時的です。吸入をすると喘息児は楽になります。ぜぇぜぇも無くなるかもしれません。「あー、よかった・・・」と思っていいでしょうか。この時、気にかけて聞いて欲しいことがあります。「ちゃんと他の吸入は毎日しているの?」と。
喘息は慢性炎症がその根底にあります。「炎症」というのは皮膚で言うなら、虫に刺されて赤くなり、腫れた状態です。アトピー性皮膚炎の皮膚では赤くなり、少し盛り上がっています。
気管支の粘膜がむくむ、気管支の周囲の筋肉が収縮し気管支が細くなる、汁(痰)が出てきて気管支の内腔を塞いでしまう→息がしにくくなり苦しいのです。たしかに気管支を拡げてあげると楽になります。しかし、炎症は続いています。気管支拡張薬のみでの治療は結局は喘息死への危険をはらんでいます。
上記のグラフのように、気管支拡張薬だけを連用して発作をごまかしているといつかは大変なことになります。国内・海外でもこの発作用の気管支拡張薬連用と喘息死との関連が報じられており、国内外のガイドラインでは炎症を抑える治療をせずに、気管支拡張薬だけを使う治療はしないよう言われています。
炎症を抑える治療にはステロイド薬の吸入またはアレルギー物質をブロックする内服薬がありますが、抗炎症効果はステロイド吸入薬が強力です。
喘息死の減少には発作時の気管支拡張薬のみの治療の見直し、喘息の本態である炎症を沈静化する吸入ステロイドの普及が寄与しています。
次回は長期的展望から炎症を抑える喘息治療の必要性をまとめてみたいと思います。