少しずつ暑くなり、汗をかく季節になりました。アトピー性皮膚炎の患者さんでは汗による症状悪化を認めることが多くあります。私は恥ずかしながら、アトピー性皮膚炎にとって汗は悪者と思ってました。
アトピー性皮膚炎の悪化因子は患者の年齢で異なります
小児期:食物抗原や乾燥、掻破などが主体
青年~成人期:ストレスや物理化学的刺激など
汗はすべての年齢層における悪化因子です。ただ、アトピー性皮膚炎のガイドラインでは汗による悪化には言及がありますが、発汗は皮膚のいい状態を保つために必要で、適度な運動や入浴で発汗を促す重要性に触れています。また、アトピー性皮膚炎の方では発汗の能力が低下しているとも記載があります。決して、汗をかかないようにすることは推奨されていません。
汗には皮膚のいい状態を保つための働きがあります。①発汗による体温調節 ②汗には天然の保湿成分が含まれる ③細菌を攻撃する物質が含まれ、感染を予防する ④アレルギー物質(ダニ・花粉など)の炎症誘導の作用を減弱する
しかも、この汗がアトピー性皮膚炎の方では少ない傾向がある。
では、なぜ汗をかくと痒くなるのか・・・
この汗の良い機能は時間とともに失われる、また汗に溶け込んだ汚れやアレルギー成分は汗が蒸発したあとも皮膚に残り、湿疹を悪化させます。特に肘・膝に汚れが溜まりやすく、同部位の湿疹が悪化しやすいのです。
汗をかいた後の管理が重要で、余分な汗は流水で洗い流す、またはおしぼりで拭くといった処置が大切です。拭くのはゴシゴシ皮膚をこするのではなく、押すように拭いてください。
アトピー性皮膚炎の方は発汗量が多くても角層の水分の量が増えにくいことが分かっています。これはアトピー性皮膚炎の角層は水分を保持する能力が低下していると推察されます。ですから、アトピー性皮膚炎の方は汗をかいても、保湿剤の塗布を継続するようにしてください。