アナフィラキシーという言葉はお聞きになったことがあるかと思います。重症のアレルギー反応のことです。医療従事者のガイドライン(手引書)では「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」とあります。
アレルギーの原因となる食品なり物質が体内に入る(食べる、刺される、投薬される)と、アレルギー症状が起きますが、その症状が2つ以上起きることです。そして、急速に進行する状況です。
アレルギー症状には起きやすさがあります。皮膚の症状、つまり蕁麻疹が最も起きやすい症状です。90%の確率で蕁麻疹を認めます。
ですから、アレルギーの人が具合が悪くなっているときにアナフィラキシーを起こしているかどうかは、まずは皮膚を診ます。赤くてかゆみがあれば、それはアレルギー症状ですから、もう一つ症状があれば、アナフィラキシーです。逆に皮膚の症状がないとアナフィラキシーの判断は難しいです。お子さんは自分の症状を表現することは難しいので、「はい、いいえ」で答えられる質問をしましょう。「お腹は痛くない?」「苦しくない?」など、具体的に症状を聞くようにしてください。
小学生では食物アレルギーは4.5%、アナフィラキシーを経験したことがあるのは0.6%です。食物アレルギーによるアナフィラキシーで死に至る確率は10万人あたり1.35〜2.71人です。少ないのですが、0ではありません。起こってしまった方にとっては100%です。
国内のある年はアナフィラキシーショックで77名が亡くなり、原因の内訳としては医薬品が48%、ハチ刺傷が31%、食物アレルギーが2.6%と医薬品とハチ刺傷が多くを占めています。ただ、毎年のように食物が原因のアナフィラキシーで亡くなられる方が数名いらっしゃいます。
では、どのような症状が危険なのでしょうか。
危険な状態は窒息とショック(血圧低下)です。上の円グラフのように死亡原因の9割近くを占めます。逆にいうと、この2つの症状の初期段階を見逃さずに対処しなければなりません。蕁麻疹が出て、「咳が続く、声が変わった、ぐったりしている」とそれはアナフィラキシーの危険なサインです。そして、命にかかわる反応は急速に進行するので急いで治療しなければなりません。原因物質によって致命的な状況になる時間は異なります。しかし、食物でも30分しかありません。
緊急で治療が必要なのです。治療は?→“エピペン”という自己注射薬です。そう、ご自身または周囲の方が打つことを想定しています。アナフィラキシーから救命できる唯一の薬剤です。
使い方に関しては販売メーカーのホームページに動画があります。
打つタイミングなどの詳しい内容は環境再生保全機構のeラーニングの食物アレルギーの項目にあります。登録が必要ですが、ミニドラマで具体的な状況を見ながら学習できます。
さぁ、治療して、アナフィラキシーの症状が改善して一見落着・・・とはいきません。1〜2割の方で数時間後に再度アナフィラキシー症状が再燃することがあります。アナフィラキシーを起こし、改善しても油断は禁物です。
アナフィラキシーの対応は座学だけでなく、実技も重要と思います。“いでクリ”では今後エピペン講習を開催していきたいと思います。県南地域でご希望の教育機関・保育施設がありましたら、お声掛けいただきますようお願いします。