こんにちは。いでアレルギー・ぜんそくクリニックです。
今回は、保護者の方や患者さんからよくいただく質問の一つ、「食物アレルギーは治るのでしょうか?」というテーマについて、現在の医学的知見をもとにご説明します。
食物アレルギーは治るのか?
まず最初に、すべての食物アレルギーが必ず治るわけではないということを理解することが大切です。
ただし、乳幼児期に発症する食物アレルギーには、適切に対応すると成長とともに治る可能性があるものが存在します。
よくあるアレルギーとその「治りやすさ」
乳幼児に多い食物アレルギーのうち、比較的治癒しやすいとされるのが「卵」「牛乳」「小麦」「大豆」です。これらの食品は、適切な診断と管理を行うことで、日常生活での制限が緩和されていく可能性が高まります。
一方で、そば、ピーナッツや木の実(ナッツ類)、甲殻類、魚類などのアレルギーは治癒率が低く、長期にわたり注意が必要となることが多いです。
年齢ごとの治癒率
近年の研究では、以下のような数値が報告されています:
・卵アレルギー:3歳までに約30%、6歳までに約70%のお子様が症状を示さなくなるとされています
・牛乳アレルギー:1歳時点で診断されたお子さんのうち、3歳になるまでに約60.4%が治癒
・小麦アレルギー:同様に、約63.2%が3歳までに治癒
(食物アレルギー診療ガイドライン2021より抜粋)
治癒を目指すにはどうすれば良いのか?
治癒を促進するために重要なアプローチの一つが、「安全に食べられる量を日常的に摂取すること(耐性獲得)」です。
具体的には、クリニック内で経口負荷試験という検査を行い、症状が出ない量(=安全摂取可能量)を確認します。その量を家庭で継続して摂取していただくことで、免疫の反応を穏やかにし、食物アレルギーが改善されていく可能性があるとされています。
また、食べることができる量を次第に増量し、「もうそのアレルギーは治っているのかどうか」を再評価するために、再度クリニックで負荷試験を行うこともあります。このとき問題がなければ、日常的な食事制限を解除することができます。
当院での取り組み
いでアレルギー・ぜんそくクリニックでは、乳児から中学生以下を対象に、食物アレルギーの診断・経過観察・経口負荷試験・栄養指導を日帰りで実施しています。
「食物アレルギーの症状が疑われて不安です」
「この年齢になったけれど、まだ食べられないのだろうか?」
「以前除去したままだけど、そろそろ試してもよいのか?」
といった疑問がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
最後に
食物アレルギーは、「一生付き合うもの」と思われがちですが、食材によっては治る可能性も十分にあります。
一方で、治りにくいアレルゲンも存在し、個別の評価が不可欠です。 自己判断せず、医師とともに慎重に進めていくことで、お子さんの未来の食生活を広げる道が開けます。
※本記事の内容はあくまでも一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者様の診療方針については、必ず医師とご相談ください。
本記事を書いた人
いでアレルギー・ぜんそくクリニック
院長 出口秀治
- 日本内科学会認定専門医
- 日本アレルギー学会認定専門医
- 日本呼吸器学会呼吸器認定専門医
- 日本喘息学会喘息認定専門医
熊本県八代市でアレルギー科「いでアレルギー・ぜんそくクリニック」を開業。
食物アレルギーと喘息という2つの専門分野をもとに診療を行っている。食物経口負荷試験は年間500件以上実施している(直近年度実績)。