こんにちは。いでアレルギー・ぜんそくクリニックです。
今回は、保護者の方や患者様からよくご質問いただく「食物アレルギーは薬で治せるのか?」という疑問について、現時点での医療の考え方を分かりやすくご紹介いたします。
ご自身やお子さんが食物アレルギーに関係すると、
・卵アレルギーを治す薬はあるの?
・牛乳アレルギーをお薬で治せる?
・小麦アレルギーの薬って?
といった疑問が少なからず浮かぶと思いますので、その疑問にご回答できればと思います!
食物アレルギーを根本的に治すお薬はありません
まず結論として…食物アレルギーで起こった症状を抑えるためのお薬はありますが、食物アレルギー自体を治す薬は現時点では存在しません。
食物アレルギーの治療を考える際、まず明確にしておきたいのは、「起こった症状には薬を使いますが、アレルギー体質自体を薬で根本的に治すことはできない」という点です。
たとえば、誤って原因となる食物を食べてしまったときに皮膚が赤くなったり、鼻水が出てくると抗ヒスタミン薬、呼吸が苦しくなったりぐったりした場合にはアドレナリン自己注射薬(エピペン)を用いて対処します。
これらは「出てしまった症状を抑えるための薬」であり、「アレルギー体質を治す薬」ではありません。
では、食物アレルギーの治し方は?
乳幼児期に発症する食物アレルギーの中には、成長とともに自然に改善・治癒するケースもあることが分かっています。
具体的には、鶏卵、牛乳、小麦、大豆といったアレルゲンは、比較的治りやすく、適切な方法で対応すれば、将来的に普通に食べられるようになる可能性があります。
食べて慣らしていく「耐性獲得」の考え方
最近の研究では、原因食物をすべて除去するのではなく、「症状が出ない量(=安全摂取可能量)」を見つけて、それ以下の量を日常的に摂取していくことで、アレルギーが改善していく可能性があることが示唆されています。
このアプローチでは、「何グラムまでなら安全に食べられるか?」を科学的に評価するために、クリニックで「食物経口負荷試験」という検査を実施します。
湿疹の治療をすることも重要です!
食物アレルギーと湿疹は一見関係がないように思えるかもしれませんが、食物アレルギーの発症に湿疹が大きく関与していることが多々あります。
詳しくはこちら▼(当院院長の解説動画です)
https://youtu.be/IvcxK3b-wks
経口負荷試験とは
経口負荷試験では、医師が安全と判断した量でアレルギーの原因食材をクリニック内で食べていただき、症状が出ないかを確認します。
この検査で症状が出なかった場合は「陰性」と判定され、同じ量またはそれ以下であればご自宅で定期的に摂取することが可能となります。年齢と食材ごとに定められた1回の食事に含まれる量の原因食材の負荷試験で、「陰性=問題ない」という判定が出れば、その食材の完全除去は不要となるため、日常生活の制限がぐっと減ることになります。
自己判断せず、必ず医師のもとで進めましょう
よくある誤解として、「少しずつ家で食べさせて慣れさせた方がいい」といった対応をされる方がいますが、自己判断でアレルギーの原因食品を与えるのは非常に危険です。
アレルギーの症状は日によっても体調によっても変動しますし、重篤な反応を引き起こす可能性もゼロではありません。
当院では日帰りの経口負荷試験を行っています
いでアレルギー・ぜんそくクリニックでは、安全に経口負荷試験を実施する環境を整えています。また、検査後のご家庭での食べ進め方や経過観察についても、個別にサポートを行っております。
アレルギーとの向き合い方は人それぞれです。一人で悩まず、専門的なサポートを受けながら進めることが、お子様の将来の食生活を広げる第一歩となります。
最後に
食物アレルギーは、今の医学では完全に「薬で治す」ことはできませんが、正確な診断と継続的な管理によって、「食べられるようになる」可能性は十分にあります。
経口負荷試験や定期的な診察を通じて、医師と二人三脚で安全な摂取の方法を考えていくことが大切です。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の患者様への個別の診療指針ではありません。食品の摂取・除去は必ず医師と相談のうえで行ってください。
本記事を書いた人
いでアレルギー・ぜんそくクリニック
院長 出口秀治
- 日本内科学会認定専門医
- 日本アレルギー学会認定専門医
- 日本呼吸器学会呼吸器認定専門医
- 日本喘息学会喘息認定専門医
熊本県八代市でアレルギー科「いでアレルギー・ぜんそくクリニック」を開業。
食物アレルギーと喘息という2つの専門分野をもとに診療を行っている。食物経口負荷試験は年間500件以上実施している(直近年度実績)。